アーランジュ・ベリーダンス・ミュージカルショー『恋の花を食べた女王とベルベットの海賊たち』 アーランジュ・ベリーダンス・ミュージカルショー『恋の花を食べた女王とベルベットの海賊たち』

■作・構成・演出  杉谷知香
■舞台監督  小笠原啓行
■出演  yukie、仁美、亜里、杉谷知香、飯島美礼、あんじ、マメ山田、Aco、Megu、小田部喬、TOMOICHI(FARHOOK)、Smile(FARHOOK)、津嘉山ディエゴ、カズマ・グレン、Kazuho、ティップネスダンサーズ(山本有香、RICO、目野陽子、十二町絵梨子、POSA、金城美智子) 他

主催:株式会社トラペジスト
協賛:株式会社ティップネス、コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社

story













2万年ほど昔、疫病の流行と小国同士の戦争で、
土地は荒れ果て、人々の心は病んで、愛する事や未来を忘れ、
世界は滅びる寸前まできていた。

ときの女王ジョセフィーヌは嘆いたが、
清らかで美しかった彼女も、滅びゆく世界と我が身に蝕まれ、
目つきは鋭くなり家族や友人にさえも情けや愛情や、
人間らしい感情を現す事はもはや無くなっていた。


そんなある日、轟音とともに嵐が来た。

海は荒れ、これでこの世も終焉かと思われた。

しかし嵐とともにやってきたのは筋骨たくましい海賊達であった。

海賊達は別の大陸で手に入れた不思議な植物を降り立った土地で高く売りさばき、
あわよくば町中の金品をも強奪しようと目論んでいたが、
降り立ったその土地は荒れ果て、死のにおいがした。


海賊の一人がこの死の土地を見渡すと、一人の美しい女性が目に入った。

正確には、美しかった面影のある女性だ。

この死の土地に蝕まれ鋭い目つきをしたその女性を、
海賊は哀れに思い、売りさばくはずの植物の一部を彼女に渡した。


花の形をしたその植物は「生」のにおいがした。


朽ち果てた木々や荒れた土地の「死」のにおいばかりを嗅いでいたジョセフィーヌは、
生存本能からその植物を食べた。

するとみるみるうちに肌には艶が戻り、体の内側から活力が溢れてくるのを感じた。

そしてジョセフィーヌは海賊に恋をした。

ジョセフィーヌが食べた植物は世にも不思議な恋の花だったのである。


かつて少子化と言われる時代があり、
平均出生率が0.012%まで落ち込んだ事があったが、
その際に学者達は知恵を出し合い、新しい時代を担う子ども達を産み落としてもらうには人々がもっと恋をするべきだという結論に至り、
長い年月をかけて開発された恋の花であった。

ジョセフィーヌは恋の花を周囲の侍女達にも渡し、誰もが幸せで夢のような恋の時間を過ごした。

不思議と、荒れた土地には花が咲き、枯れた植物も芽吹きはじめた。

恋の花によって、荒れた土地は救われた。

ジョセフィーヌと侍女達は思い思いに恋のダンスを踊った。


ジョセフィーヌの城の隣に住むリゾルテはジョセフィーヌが海賊と逢瀬を重ねる様子を目撃し、不快をあらわにした。

リゾルテも恋の花を食べ、海賊に恋してしまったからである。

通常、1つの恋の花につき1カップルしか成立しないようプログラム化されているのだが、遺伝子組み換えなどにより、
例外的に別々の花を食べ一人の男性に恋に落ちるケースもあるようだ。

リゾルテはジョセフィーヌを殺し、海賊の気を惹こうと、剣を持ち出した。


一方、ジョセフィーヌには2人の姉がいた。

2人の姉は、面倒な王位継承を免れ、悠々自適な暮らしを送っていたが、
リゾルテの一件で可愛い妹が命の危険にさらされている事を知り、
それぞれに制裁を下すべく立ち回った。

2人の姉の助けもあり、ジョセフィーヌは無事にまた海賊と結ばれた。

懲りないリゾルテは、もう一度恋の花を食べ、別の海賊との恋を望んでいた。

恋がなかった時代の荒れた土地の面影は、もうここには無い。


人生はすべてラブストーリーである。

生まれた土地や植物や木々や大地や空を愛すること、家族や友人や、
周囲の人々を愛すること、そして特別な人と恋に落ちること。

人生がラブストーリーである事を忘れずにいれば、戦争も、
大気汚染も、環境破壊もおこらないはずだ。

海賊達は美しい姫達を禁断の船に乗せ、恋の花咲き乱れる大陸へ出航の準備を整えた。


すべての歴史はラブストーリーからはじまった。