8人の女泥棒と宝石を食べた天使
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8人の女泥棒と宝石を食べた天使
杉谷知香 (サファイア) 女泥棒yukie (ブラックベール・リン) 女泥棒飯島美礼 (フジコ) 女泥棒亜里 (ラズベリー・ジャム) 女泥棒
杉谷知香 (サファイア) 女泥棒yukie (ブラックベール・リン) 女泥棒飯島美礼 (フジコ) 女泥棒亜里 (ラズベリー・ジャム) 女泥棒
「ベリー・コンシャス」「杉谷知香のベリーダンス本(DVD付き)」など数々の書籍やDVDをリリース、ショーの演出も手掛けるベリーダンス界の第一人者。優雅なパフォーマンスも必見。
「アーランジュのベリーダンス・ダイエット」シリーズなどアーランジュのDVD作品には欠かせない存在。技の正確さと美しさは群を抜く。若手ベリーダンサーの中で今一番の注目株。
モダンバレエの基礎を持つダイナミックなパフォーマンスは圧巻。アメリカで最も歴史のある「Rakkasah Festival」に参加するなど国際的に活躍中。
ロンドン在住中にベリーダンスと出会う。絵画の制作なども行なうアート的な感覚が優れたキュートさ120%のベリーダンサー。
メリハリの効いた女性らしい美しいBODYでグレイスフルなベリーダンスを繰り広げるNisaa。恵まれた容姿と天性の才能はまさにベリーの申し子。
DVD「カリビアンダンス・エクササイズ」をこの夏にリリース、雑誌BODY+での連載も大好評のモデル出身、美女ダンサー。
ファイヤーを使ったベリーダンスなど、一癖も二癖もあるパフォーマンスでacoの出演するステージは毎回大人気。ユニクロのCMにも出演。
慶応義塾大学卒業後、広告代理店勤務を経てトルコにダンス留学。新体操の基礎をベースに滑らかな演技が特徴的なプロのベリーダンサーとして活躍中。


関根ゆみ (ライオンマザー)ISHY (宝石を食べた天使)
ISHY (宝石を食べた天使)ISHY (宝石を食べた天使)
アフリカンダンスやヨーガなどを取り入れたワイルドでラグジュアリーなスタイルを確率した唯一無二のベリーダンサー。迫力のパフォーマンスは要注目。
暗黒舞踏を7年間学び演劇からダンスまで舞台経験を積む。ロンドンでサーカスを学び、03年カナダへ渡りサーカス公演に出演。東京を拠点に活動。華麗なエアリアルを披露!
MA☆SA(天使)
MA☆SA(天使)
ヒップホップ、ハウス、ロッキン、ジャズ、アニメーション等、様々なダンスを通じエンターテイメントなダンススタイルを目指し今に至る。
津嘉山ディエゴ(天使)
津嘉山ディエゴ(天使)
テレビ朝日 ミュージックステーション出演や、NHKパフォー夏フェス2009など幅広いジャンルで活躍中。
田淵美菜子(妖精)
田淵美菜子(妖精)
新体操歴9年、多様な手具操作を行う。スポーツクラブのインストラクターとしても活躍中。
POSA(魔女)
POSA(魔女)
JAZZやHIP HOP、コンテンポラリーなど様々なダンスを繰り広げるダンサー。スポーツクラブのインストラクターとしても活躍中。
布施伸吾(ライオンマザーの一味)
布施伸吾(ライオンマザーの一味)
2004年に主宰団体である「殺陣師屋本店」を立ち上げ舞台作品を中心に殺陣、アクションシーンの振付、演出をしている。
横山弘泰 バリトン(天使方の弁護士)
横山弘泰 バリトン(天使方の弁護士)
東京大学物理学科卒業、同大学院修了。これまでに「マクベス」「フィガロの結婚」標題役をはじめ、シリアスからコミカルまで40以上の役を演じる。
はやとんぬ。。(天使)
はやとんぬ。。(天使)
多ジャンルをこなすJazzダンサー。e-maのど飴やプロテインウォーターのCMにも出演。スポーツクラブのインストラクターとしても活躍。
YASU-CHIN(天使)
YASU-CHIN(天使)
魅惑的な雰囲気を持つJazzダンサー。
熱く楽しく活動中。
bable(ブラックマン)
bable(ブラックマン)
大手レーベル等でアーティスト育成を担当。自身も織田裕二、上地祐輔、KREVA、AAA、DJ OZMA他、PV振付/出演。(株)ファントエンターテインメント所属。
その他の出演者
Sakura、桁山涼子、miki、mie、AIKO、Saya、Rei、hi-chan、a-ya-chan、HYDECO、keiko、佑佳

スタッフ
原作・構成・演出:杉谷知香/振付:アーランジュ 他/舞台監督:Kensuke Shinohara/音楽監督:渡邉 聡/グラフィックデザイン:宮村泰朗/スチール(メイン):田川智彦/ヘアメイク:片岡順子

主題曲
『女泥棒のテーマ」/渡邉聡(AALANJU RECORDS)
2009.11 on sale!



場 所 ラフォーレミュージアム六本木
〒106-0032 東京都港区六本木1-9-9
六本木ファーストビルB1F
日 時
10月30日(金) 
10月31日(土) 
19:00 開演(18:00 開場)
15:00 開演(14:00 開場)
19:30 開演(18:30 開場)
料 金 SS席 6000円  S席 4800円


予言者の言葉通り、あの夜、天使は雌ライオンから生まれた。人々は恐れおののいたが、いつしか彼こそが神の子と、誰もが崇拝する存在となっていった。

ライオンから生まれた天使は、宝石しか食べなかった。天使の体は内側から発光し、まさに存在そのものが宝石のようであった。画家達はこぞって天使を絵画の中におさめようと必死であった。だが、その姿はあまりにも美しく、どの画家の才を持ってしても、天使の真の姿を絵画におさめる事はできない。しかし時の画家エイブラハムが新しい技法で目映くきらびやかな天使の肖像画を描く事に成功した。
その3日後に天使は消息を断った。人々は、エイブラハムが天使を絵画の中に閉じ込めたのではないかと口々に噂した。天使を殺して、絵の中に永久に封じ込めたのではないかと。二千年前の話である。

【メリッサ・ジャスティファイ/グレナデン・ジャスティファイ(ジャスティファイ姉妹)】
2016年ラスヴェガス。メリッサ・ジャスティファイは退屈していた。メリッサと、妹のグレナデンはカードゲームの達人としてあらゆるカジノで名を馳せていた。表向きは優美でグラマラスで世の男性を惑わす官能的なルックスの2人は、共謀してあらゆるカジノで勝ちまくっていた。もちろん正当なやり方でではない。しかし美しくセクシュアルなジャスティファイ姉妹に目を奪われ、今まで誰一人として騙された事に気付かなかった。2人はあらゆる男性を手玉に取り、世界中を駆け巡っていた。こんな生活そろそろ飽きちゃったわ。メリッサ・ジャスティファイはお気に入りの毛皮のマフラーの先を指先で弄びながらそう言い、中国に電話をかけた。

【ブラックベール・リン】
リンはその柔らかな全身を惜しげもなく使い、ダンスの最中だった。中国マフィアの首領の一人娘の彼女は14歳まで雑技団で英才教育を受け育った。15歳になった彼女はそのしなやかな体の柔らかさを活用し、飛行機の手荷物に潜り込み、国から国へと移動しながら金品を運ぶ仕事を始めた。マフィアの父親は彼女を子猫のように可愛がっていたが、近親相姦一歩手前といった父親の愛情に辟易したリンは、飼っていた虎の檻に父親を閉じ込め餌食にし、自分の手で生きて行こうと主に盗品の宝石を国外へ持ち出す仕事を始め、世界の宝石業界から密かに恐れられる存在となったのである。また、黒いベールを翻し宝石を盗み出すその美しさからいつしか「ブラックベール・リン」と呼ばれるようになり、泥棒業界の業界紙『THE THIEF』の表紙を飾るまでに成長していた。リンは、メリッサ・ジャスティファイからの電話を受けるとすぐさまアンティークの小箱を取り出した。

【ラズベリー♡ジャム】
価値のある物が100年の時を経るとアンティークと呼ばれるようになる。リンは5年前、パリの有名メゾンのアンティーク倉庫から不思議に輝く小箱を盗み出した。中身は空であるのにどの宝石よりも輝くその小箱は、ある夜、リンの寝室でカタカタと音を立て、中から可愛らしい妖精が顔を出した。ラズベリー♡ジャムである。ラズベリーは120年も前から小箱に閉じ込められ、外界に出るチャンスをうかがっていた。リンの手によって外界の空気を久しぶりに吸ったラズベリーは120年前に時を止めたその若さと美貌をフル活用し、人間のサイズに変身するやいなや、あらゆる男性を虜にし、彼らが持つ全ての金品を吸い上げた。ラズベリーに金品を吸い上げられた男性達は文無しとなり、路頭に迷ったが、不思議とラズベリーの魔力で幸せそうであった。いっとき、街はハッピーなホームレスであふれかえった。
【サファイア】
ラズベリーはリンを魔力でスペインまで運び、ヴァカンス中のサファイアに会いに行った。2人はサファイアに、メリッサ・ジャスティファイの誘いを告げた。サファイアは先祖代々泥棒の一族で育った生粋の泥棒である。サファイアの一族は一貫して美術品しか扱わない。マネ、モネ、パブロ・ピカソ……、世の中に、消えた名作がいくつあるだろうか。それらはほぼ全て、サファイアの家の倉庫に眠っているのだが、その事実を知る物はわずかしか居ない。サファイアはまたキワモノ好きとしても知られ、しばしば人間以外の生物と恋に落ちた。少し前までは、馬、蛇、中国のドラゴンなどがサファイアの恋のお相手だったが、今サファイアが夢中なのは天使だ。2016年の現代、天使は希少価値が高く、めったにお目にかかれない生物だが、サファイアは美術界の裏情報をつかんでいた。二千年前に絵画に閉じ込められた天使が、発見されたというのだ。サファイアはその天使と恋に落ちる事を目論んだ。さらに、その天使はたくさんの宝石を飲み込んでいる。リンとラズベリーの目も輝いた。

【ゾーイとサルビア】
サファイアはジプシーの占い師、ゾーイとサルビアを呼び出した。ゾーイは炎や縄を操り、サルビアは水晶やタロット、日常の道具を使って未来を読みとった。その的中率はほぼ100%であり、世界中の政治家はお忍びで彼女達のもとを訪れた。アメリカの政治家もアラブの政治家も日本の政治家も。ゾーイとサルビアは、私達のもとを訪れているのは、あなただけです、とそれぞれの客人に告げ、予言を与えた。いつしか世界は彼女達の思うがままに回るようになっていた。恐慌も好景気も戦争も、すべてゾーイとサルビアがコントロールした。だが、それを知る首脳は一人としていない。「政治を動かすのは飽きてきたわ。」ゾーイが言った。「ジャスティファイ姉妹の誘いに私達も乗る。サファイア、あなたの知りたい『宝石を食べた天使』の絵画は、日本にあるわよ」

【フジコ】
枯山水の美しい日本庭園を臨む屋敷にフジコはいた。フジコは常に冷静沈着で品が良く、表向きはマダム・フジコと呼ばれる才女だが、しかし実は骨董品を主に扱う泥棒であった。フジコは突然駆けつけた7人の女性達を茶室に招き、茶の湯でもてなした。その手前はたいそう美しく、ジャスティファイ姉妹の妹、グレナデンはレズビアンではないにしても、フジコとの一夜を想像し体をふるわせた。グレナデンは、夜は女王様としても活躍する。フジコは、メリッサ・ジャスティファイに事のなりゆきを詳しく訊いた。「私たち、普通の日常に飽きてしまったの。何か面白い事がしたくって。」リンが続けた、「『宝石を食べた天使』の絵画を盗み出しましょう、この国にあるはずよ。」

8人の女泥棒が揃った。
ゾーイとサルビアの占いでは、満月の夜、絵画の中の天使が復活するという。8人は時が来るのを待った。やがて満月の夜となり、8人の女泥棒が待ち受ける今は廃墟となったかつての美術館に、『宝石を食べた天使』の絵画が運びこまれた。真夜中の12時になり、静寂と 小天使の歌声とともに、二千年の時を経て、絵画の中から天使が復活した。

筋骨たくましく、発光する肉体を持った天使。天使はやがて、絵画から抜け出ると、自在に身体を動かし始め、天上から下界まで自由に行き来しはじめた。女泥棒たちはそれぞれの思惑から身をしならせて歓喜した。ラズベリー♡ジャムは、妖精仲間をしたがえ、早速求愛の儀式のダンスを踊った。しかし、天使の復活とともに恐ろしい事が起こってしまった。サルビアの水晶にも現れなかった、まさに予期せぬ出来事である。天使の母親である、雌ライオンも二千年の時を経て、現世に復活してしまったのである。ライオンマザーがよみがえってしまった。

かつて、ライオンは天使と恋におちていた。その事実はタブーとして現存する書物などには一切記されていないが、主に天使が男性であるケースが多く、雌ライオンとしては受け身の恋愛であった。二千年前のケースも決して珍しくはなく、ライオンマザーは男の子を産み落とし、その姿は天使の男性であった。奇怪であったのはその天使が宝石を食べるという事だ。街の人々は口々に、これは吉兆だ、いや凶兆だ、と噂を立てた。誰一人、この事実が何を意味するのかわからなかった。しかし、二千年の時を経て、宝石を食べた天使とライオンマザーは復活を遂げたのだ。ライオンマザーは天使の息子をしてこの世を手中におさめようと企んでいた。

8人の女泥棒は予期せぬ事態にあわてふためいた。ライオンマザーの復活は予想外だった。ジャスティファイ姉妹はお得意の技を駆使し、ライオンマザーと闘った。
ジャスティファイ姉妹の美しさに、街中が拍手喝采した。しかし、ライオンマザーはひるむ事なく挑んできた。

その隙に、ブラックベール・リンは、そのベールさばきでせっかく訪れたのだからと日本中の宝石を盗む事を試み、成功していた。リンはいつでもそつがなく、抜け目がない。可愛さとキュートさと強さで、宝石を盗む合間に雑誌『THE THIEF』の日本版、『THE THIEF JAPON』の巻頭8ページの取材も受けていた。

ライオン・マザーとジャスティファイ姉妹が闘っている頃、サファイアは、宝石を食べた天使を追いかけた。 彼女は純粋に、宝石よりも天使と恋におちる事を望んでいた。しかし宝石を食べた天使はサファイアには興味をしめさず、サファイアは打ちひしがれた。宝石を食べた天使は一体何を望んでいるというのか?サファイアはゾーイとサルビアに問いかけた。

赤い薄ぼんやりとした酒場でゾーイとサルビアはお得意の占いとダンスを披露していた。彼女達が踊るとその場は陽気になり、誰もが踊り出す。夜は更け、酒の匂いと一夜限りの恋の匂いが充満しはじめた頃、うっすらと残る月を見上げサルビアが予言をはじめた。「凶兆だ。争いが起こる」。

サルビアの言葉を受け、フジコは舞った。何が凶兆だ。ここはアタシの国だ。よそ者の予言に振り回されてたまるか。フジコは意志が強く、その舞いは朝の陽光を連れてきた。いつしかあたりはうっすらと朝になり、フジコの美しさがいっそう際立った。フジコは天使の「中」にある宝石さえ手に入れば、もうそれで何も必要ないと思っていた。
日の出とともに小天使の歌声が聞こえる。神々しく力強い歌声。女泥棒たちはそれぞれのやり方で宝石を食べた天使を追いかけていたが、誰一人としてまだ天使に手が届いていない。歌声の中、やがて戦がはじまってしまった。サルビアの予言が当たってしまったのだ。女泥棒達は、なかなか捕まらない天使と、手ごわいライオン・マザーに業を煮やしていた。また、ライオン・マザーも、この世を手中におさめるために目障りでやっかいなこの8人の女泥棒をどうにか消してしまいたいと思った。激しく荒れ狂う空と海と大地。いつしか女泥棒たちは本来の目的を見失っていた。この争いは何のためにあるのか。人は、何のために争うのか。

争いの中で、女泥棒も、ライオン・マザーも傷ついた。身も心も芯から傷つき、その地に果てた。誰一人として宝石も、この世も、何も、手に入れる事は出来ていない。争いは何を生み出すのだろう?

争いは何も生み出さない。突然、宝石を食べた天使が語りはじめた。皆が彼の言葉に耳を傾けた。

争いは何も生み出さない、残るのは傷ついた大地と傷ついた心と、傷ついた人々。たくさんの悲しみと、たくさんの涙。天使は空へ向かって羽ばたきはじめた。そして言った。僕が食べた宝石は、人の心の美しさの象徴。他人を思いやり、争いを起さないというメッセージさ。二千年の時を経て、世の混沌と争いを鎮める。そのために『宝石を食べた天使』はこの世に生を受けたのかもしれないーーー。

1週間後、何事も無かったように女泥棒たちはそれぞれの国に帰っていった。リンとラズベリーは中国に戻り、ジャスティファイ姉妹はラスヴェガスに戻った。サファイアはスペインへ戻りヴァカンスをやり直し、ゾーイとサルビアはジプシー生活に戻った。唯一フジコは日本に残ったが、また以前と同じ生活に戻った。8人それぞれ、女泥棒としての生活である。天使は人々の心に美しい何かを残した。しかし女泥棒は女泥棒である。そこに宝石があれば、そこに美術品があれば、そこに男性がいれば、盗んで手中におさめる。長い歴史の間、女性は弱いものとされてきたため、男性に忠誠を誓うふりをして色々なものを盗んできた。しかしそろそろ女性達は本気で盗むべきではないのか?この社会から。地位や名誉や、その生き方を。 昔のような、女が男らしくふるまう間違ったやり方ではなく、女性にしかない優雅さと賢さを利用して。


今こそが、美しき女泥棒の時代。
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